2019年02月
「コロンボ警部がジムリーダーサカキに目をつけたようです」傑作じゃん!②
「コロンボ警部がジムリーダーサカキに目をつけたようです」に見られる、コロンボ諸作への引用・目くばせに関して色々と。
「秘密を“潔癖な部下”に知られてしまったエスタブリッシュメント」という物語の出だしは古畑任三郎「すべて閣下の仕業」でしょう。「共犯者を立て、強行犯の仕業に見せかけ自身はアリバイを確保する」という犯行が、その「すべて閣下の仕業」の“元ネタ”(「大使館を舞台にした、外交官による殺人」)である「ハッサン・サラーの反逆」に擬しているという配置の仕方が、なるほど気が利いています。
ラストのコロンボによる逆トリックは(ネタバレ反転)「5時30分の目撃者」の引用ですが、それを成立させているのが「モノマネむすめ」と「少年(レッド)とサカキの接触」という、赤緑のストーリーラインに沿った道具立てであることが、単なる模倣に終わらない、クロスオーバー作品ならではの上質な仕掛けとして機能しています。「目撃したね!」の畳みかけは「逆転の構図」ですね。(ネタバレ終り)
また、「動物を凶器にした殺人」として「攻撃命令」への、(ネタバレ反転)「替え玉」を使う逆トリックへの目配せとして「忘れられたスター」の射撃試験のくだりへの(ネタバレ終り)言及を忘れません。そして「祝砲の挽歌」を思わせる職業と信念に関するディスカッションの後、コロンボはサカキに、「モンテフィアスコーネ」を“最高のデザートワイン”と勧めます。
言うまでもなく「別れのワイン」で、最後にコロンボがエイドリアンに贈るワインです。最高の~とはエイドリアンの評。
(犯人を追ってイタリアンレストランにやって来るという、同シーンのイメージは「断たれた音」であり、つまり押しかけてきたコロンボにタジタジになる店員さんはヴィトー・スコッティ氏が演じているに違いありません)
※ちなみに実際の「エスト!エスト!!エスト!!!ディ・モンテフィアスコーネ」は、スキッとした酸味の強い辛口白ワインなので、全然デザートワイン感はないんですよね。シーフードのピザとかに合うやつ。
そう言えば、「牡蠣と一緒にモーゼル出されて喜んでるってベロ死んでるんか」って難じているワイン好きの人のコメントをどこかで見た覚えがありますが、モーゼルワインの看板は辛口のリースリングらしいので、個人的には牡蠣に合わせてもおいしいと思うんですけどね……? 酸味が柔らかいから生ガキだと合わないのかしら。牡蠣フライには合いそう。
さらにさらに、一部のミステリ好きだけ喜ぶ豆知識を足すと、ラストにエイドリアンが叩き割ってるワインの一本はシャトー・ディケム。有名なハイパー高級貴腐ワインで、『ハンニバル』でレクター博士がクラリスへのバースデープレゼントに残したワインであり、泡坂妻夫「紳士の園」で近衛と島津がスワン鍋と一緒に飲んでいたワインですね。若い安いものでも1本6万とかするんですよねー……飲んでみたい。
斯様に、コロンボパスティーシュとして諸作のイメージを巧みに織り込みながら、きちんと「ポケモン世界の殺人」として必然性のあるストーリーを展開しているのが見事です。
「コロンボ警部がジムリーダーサカキに目をつけたようです」傑作じゃん!①
ポケモン赤緑世代で『刑事コロンボ』好きな人は読んだら全員泣いちゃうんじゃない?
以下、ネタバレしたりしなかったりしながらレビュー。
その二面性は、そのままサカキのキャラクターとしての魅力にもつながっています。赤緑において彼は露悪的な敵役として登場しますが、同時に三たび戦い、自身を破った主人公に対して「……君はとても大事にポケモンを育てているな」「君とはまたどこかで戦いたいものだ」と、好敵手として賛辞を送り、最後にはジムリーダーとしてバッジとともに「ポケモンリーグへ挑む君への餞別だ」と自身が開発したわざマシンを贈ります。
「コロンボ警部がジムリーダーサカキに目をつけたようです」では、そんなサカキの二面性を、「動物を用いた格闘の世界に身を置く名士」という設定が重なる「闘牛士の栄光」のルイス・モントーヤのイメージを与えることで、コロンボ的犯人像として違和感のないキャラクターに仕立てています。
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