アニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(『はめふら』)に死ぬほどハマッていたわけです。
きっかけは外出制限下で友人たちと毎週末やっていたオンライン映画鑑賞会で、誰かのオススメでみんなで観始めたのですが、第2話時点では、

「へええ。私みたいな外の人間が『なろう系』『異世界転生もの』って一括りに思っているジャンルも、これだけ多様な切り口の作品があるんだなぁ……なかなか主人公に好感が持てるし、面白い作品じゃないの」

くらいには冷静だった私が、11話を観終わる頃には原作小説もコミカライズもピンナップと内田真礼さんのインタビューが載ってるアニメージュも全部買った上で、

「カタリナ様!私を置いていかないでください!再来週にはカタリナ様と会えなくなってしまうなんて!貴方のいない世界で私はどうやって生きていけば良いのですか!?」

と号泣するくらいには平静を失っていたわけですね。
二期の報がなかったらどうなってたか分かりませんよ本当。
百合アンソロも本当に楽しみ。なんでそんなに顧客が本当に欲しかったものを形に出来るの?担当編集の人ウォルト・ディズニーの生まれ変わりなの?

この一か月は、仕事しながらも「私があの学園のモブ令嬢だったらカタリナ様にどう落とされたいか」ばっかり考えていました。

私は新興の伯爵家の一人娘で、容姿も魔力も大したことない、目立たない生徒なんですね。
さる侯爵家の分家筋として男爵位を得ているに過ぎない家だったのが、父が鉱山経営で莫大な財を成し、王室に多額の献金をしたことで伯爵に取り立てられた経緯から、社交界では「金で爵位を買った成り上がり」と蔑まれ、その娘である私も幼い頃からやっかみ半分にずいぶんと辛いことを言われてきたんです。そんな私が唯一逃げ込めたのが、幼い頃から習っていた油絵だったのですが……

あっこれ長くなるな。本題に行きましょう。
今回はアニメ『はめふら』の、多くの人から「これはどういうことなの?」「これはおかしいんじゃないの?」とツッコまれそうなポイント……というか、私が「ん?」と思ったポイントについて、愛の力で死ぬほど理論武装して、私なりに考察した「回答」をまとめてみました。

※原作全巻買ったけどアニメで初見したいから3巻以降を買ったのに読んでないくらいのアニメ過激派なので、基本的にアニメ+原作およびコミカライズの当該範囲を元にしています。

「ナーロッパ」なんて言われて、舞台設定なんかはけっこういい加減なのかと思いきや、「意外に裏設定的にきっちり決められてるのでは……?」と感じたところも多く。



①ソルシエ王国ってどういう国なの?貴族の名づけ適当じゃない?

「ソルシエ」って国名はフランス語っぽいけど、王家の「スティアート」はじめ「ハント」とか「キャンベル」あたりは英語姓っぽいし、でも「クラエス」と「アスカルト」は英語っぽくないんだよな……下の名前も、他はみんなはとりあえず英語風だけど「カタリナ」だけ浮いてるし……

ここで「適当につけたんでしょ」と言わないのが過激派なので考察していきます!

現実世界におけるヨーロッパをモデルに、ソルシエ王国の位置する大陸には、血統・語族的に近い複数の民族・言語が隣り合っているのだと仮定すると、

まず、「ソルシエ」はフランス語のSorcier(魔法使い)が由来なのは間違いないでしょう。一応「剣と魔法の国」ですし。

「スティアート」は、「ステュアートStuart」の綴り替え・バリエーションでしょう(英語表記はそのままStuartですし)。王家ということで、14世紀からイングランド王家として君臨したステュアート家がモデルなのだと思われます。
史実のステュアート家はブルターニュの小貴族がルーツだそうなので、スティアート王家もフランス系(正確には「あの大陸におけるフランスにあたる地方」ですが)という設定があり、それが国号に現れているのかもしれません。

「ジオルドGeordo」はおそらく英語名(ジオルドという名は聞いたことがないのですが、おそらく「ジョージGeorge」のバリエーションなのでしょう。ギリシャ語起源の名で意味は「農夫/大地を耕す人」だそうで、カタリナ様ガチ勢のジオルド様は喜ぶと思います)ですが、「アランAlan」は英語名としてもフランス語名としても通用する名前ですし。

「クラエスClaes」はスウェーデンが起源の名前で、サンタクロースでおなじみ「クラウス」の向こうでの読み方・綴り方だそうです。姓としても、例えばベルギーでは比較的ポピュラーな名前だとか。ヨーロッパで言う「北の方の名前」なんですね。

おそらく「アスカルト」は北欧神話における神の国の名「アスガルドAsgard」がルーツと思うので、こちらも北欧系の姓だとカウントして良さそうです。

つまり、主要登場人物の姓は「イギリス系」「北欧系」に大きく二分できるということです。

「北欧系」が、王位継承の派閥争いで中立を許される格と力のあるクラエス家と(世襲があり得ると説明されている)宰相職に任命されているアスカルト家と、いずれも「名門」であること、この国では基本的に貴族の爵位名(領地名)と姓が一致していること、さらに、平民のマリアさんがいかにもイギリス系の「キャンベル」(Campbellはスコットランド由来だそうです)であることを考えると、

1)おそらくこの大陸には、覇権を握るような「大きな国家」(全盛期の神聖ローマ帝国的な)があり、スティアート家はその重臣として領土と支配権を安堵されて建国した立場なのではないか。

2)その領土は言語としてイギリス系に属しており、その統治にあたって、元はフランス系だったスティアート家およびその家臣たちは、国号こそフランス系にしたものの、自分たちは「現地化」した英語風の名に改めたのではないか。(ハント侯爵家やシェリー男爵家は、スティアート家から与えられた領地の地名から創氏したのかも?)

3)クラエス家とアスカルト家は、元はスティアート家と領土を隣接する、同格の「大きな国家」の貴族(彼らの姓・爵位名の由来になった領土は言語として北欧系)であり、同盟を結んだ「諸侯連合」という関係を経て、スティアート家の臣下にくだった経緯から特権的地位が保証されているのではないか。

さらに、魔法学園の学生寮が、「公侯伯」と「子男」で家柄で区別されており、伯爵家の一部も後者に入れられる場合があるという設定があるので、ソルシエ王国の貴族は

「A.スティアート家と本来同格な『大きな国家』における貴族」
「B.スティアート家の譜代家臣の中で、姻戚関係があるなど特に有力な家」
「C.その他のスティアート家の家臣、およびソルシエ王国の併合後に貴族に取り立てられた家」

の三種があり、クラエス家とアスカルト家がA、ハント家とシリウス家がB、シェリー家がCであり、伯爵以上は基本的にAとBの家が占めていて、時に家柄を越えて要職に抜擢されるなどした時に、Cの家から伯爵に上がることがある……という構造を想像してみました。

「大きな国家」の存在は、クラエス家の人々の名づけからも感じられるんですよね。
パパの「ルイジ」は明らかにイタリア系ですし、「カタリナ」もスペインもしくはイタリアっぽい読み・綴り方(英語で言う「キャサリン」に相当)なんです。
なので、自身のルーツと関係のない領土を支配していた感じがするので、地元の豪族が成長して貴族化したというより、ある王家の重臣が辺境伯として派遣されたパターンなのではないかと。
そして、スティアート家とその家臣たちがイギリス風に名を改めた今でも、クラエス家本家の人たちがイタリア風の名を代々名乗っているあたりに、うちはスティアート家に追従したりしないよ、っていう前述した「本来、同格かそれ以上だった家柄」というプライドが感じられるんですよね(分家のキース君は英語名なわけですし)。当主が代々「身分の隔てなく公平に扱う気さくな人」でいられるのも、「王家すら我が家からすれば格下」という、圧倒的貴族意識がベースにあるゆえなのかも。

ちなみにママの「ミリディアナ」は、Meridian(子午線)のバリエーションでしょうから英語名、生家の「アデス」もイギリス系の姓ですから、ソルシエ王国においてクラエス公爵家とも格が違わないというアデス公爵家は、Bの筆頭の家柄なのかもしれません。


はーい②につづくよ!
次回は「時代設定考察」と「6話と7話のアニオリ展開ヘンじゃね」話など!